「家族がゴミを捨ててくれない」
「どう説得しても片付けに応じてくれない」
片付けを拒否され、どうやって汚部屋やゴミ屋敷を整理すれば良いか悩んでいる人は少なくないでしょう。
ものを溜め込んでしまい、手放すことが苦痛な人は「ためこみ症」になっているかもしれません。
ためこみ症は精神疾患のひとつで、適切なアプローチをしないと改善が難しい症状です。
汚部屋やゴミ屋敷に住む人がどうやって説得してもゴミを手放さない…。
この記事では、ためこみ症の症状やリスク、治療法例について解説していきます。
ためこみ症について理解し、その人に適した方法で清潔な部屋を取り戻すきっかけにしてみてください。
※当記事はゴミ屋敷の人が必ずためこみ症と断定するものではありません。
▶経歴
・公益社団法人日本ペストコントロール協会ペストコントロール技能師
・3,000件以上の孤独死案件に携わる
▶メディア出演
・「ABEMA 変わる報道番組 #アベプラ【公式】」ABEMA
・「田村淳の地上波ではダメ!絶対!」BSスカパー
・日刊SPA!
・bizSPA!フレッシュ
・「Channel恐怖」Aamzon prime video
1.生活に支障をきたす「ためこみ症」とは
ためこみ症とは、ホーディング障害とも呼ばれ、大量の物を収集してしまう精神疾患の1つです。(注1)
誤解されやすい点ですが、ためこみ症の人は自分の趣味のものだけを集める収集家とは異なります。
収集家(コレクター)は特定のものだけを集めますが、ためこみ症の人はどんなものも集めてしまいます。
そして、所有物を捨てることや手放すことが困難となり、ゴミ屋敷の原因となってしまうのです。
程度には個人差がありますが、2014年3月時点で人口の約2~6%がためこみ症だと推定されています。(注2)
ためこみ症の多くは青年期に始まり、適切な治療がなければ収集が止まらず、結果として居住空間に生活できないほどの物品が溜まりゴミ屋敷化すると考えられるわけです。
以下の記事では、ゴミ屋敷のレベルに応じた片付け方法と対処方法も解説しています。
是非チェックして、自分の家がゴミ屋敷ではないか客観的に見てみるのも良いでしょう。
2.ためこみ症の人の具体的な症状・特徴
ためこみ症とは、以下のような症状が例として見られています。
ためこみ症は性格の問題ではなく、治療が必要な精神疾患の1つです。
それぞれの症状を詳しく確認しましょう。
【関連記事】母が物を捨てられないのは病気のせい?懸念される病気や部屋を綺麗にする方法を紹介
症状1.ものを捨てることが大きな苦痛になる
ためこみ症の人は、ものを捨てるのが非常に苦痛だと感じるとされています。(注3)
例えば、集めたものは不要なものと本人が認識しておらず、大切なものなので捨てられないという拒否が見られるケースがあります。(注4)
ためこみ症の人はどれだけ価値が無いと思えるものであっても、ものを取っておかなければいけない、という意識にとらわれています。
ためこみ症の人と話す時は、「ものを捨てるのが辛いんだ」ということを理解しておきましょう。
症状2.ものへの執着心を制御できない
ためこみ症の人は、実際のものの価値に関わらず、収集物に強い執着心を持っています。(注4)
執着する対象は不規則であり、弁当の空き箱や使い古した服、汚れたコップなどに執着するなど、他の人から「それはゴミだよ」と指摘されるものも含まれるでしょう。
ためこみ症の人がゴミだと思われるものを集めてしまう理由は、価値のあるものを保存しておくことではなく、ものを溜めておくことを目的だと考えられているためです。
症状3.家がモノで溢れている
ためこみ症と診断される人の大きな特徴に、集めたものが散乱し生活に支障が出ていることが挙げられます。
軽度のためこみ症であれば、家のスペースが狭まることもなく通常の生活が可能です。
しかし症状が重くなると、ものをかなり多く溜め込むためにキッチンやトイレなどの生活空間が使えなくなるレベルまで蓄積します。(注2)
症状4.無価値だったり不要な物を大量に集める
ためこみ症の人は、一般的に価値が無いとされるものを大量にためこみます。
何故なら、自分がためたものに対して「これはまだ使える」「いつか使えるかもしれない」と価値を感じたり、強い愛着を持っていたりするからです。
例えば、古新聞や古雑誌、家に届いたチラシや郵便物などがためこみの対象に挙げられます。
ためこみ症の人の多くは、ためたものによって散らかった部屋が生活空間としての使用が難しいか、不可能になることが多いです。
テーブルや床、ベッドの上などにも物を積んでいくことがよくあります。
こうした物のためこみによって、食事や睡眠などの生活行為が阻害され、健康被害が発生するのです。
次は、ここまでご紹介したためこみ症を放置するリスクについて解説していきます。
3.ためこみ症になる原因とは?
ためこみ症は、さまざまな要因が合わさって発症すると言われている病気です。
大きな要因としては、『遺伝的な要因』『性格的な要因』『環境要因』があると言われています。
特に環境要因については、強いストレスがある場合にためこみ行為が始まったり、さらに悪化してしまうこともあります。
いずれにしても、本人を一方的に責めるのではなく、前向きに症状と向き合いながら治療していく方が良いでしょう。
ゴミ屋敷になる原因は主に7つの理由があります。
以下の記事ではゴミ屋敷の原因やゴミ屋敷を放置することによる命やお金のリスクなどを解説しているので、併せてご確認ください。
4.ためこみ症の治療方法とは?
ためこみ症を治療するには、専門の医師による適切な治療が必要です。
しかし、疾患としてはまだまだ未知数であり、必ず治るという治療法は確率されていません。
しかし、以下のような試みは行われています。
- 特定の抗うつ薬
- 認知行動療法
参考として見ていきましょう。
例1.特定の抗うつ薬
ためこみ症に対しては、抗うつ薬が役立つことがあるとされています。(注3)
うつ病が原因で物を捨てる行為ができにくくなっている可能性も考えられます。
具体的な薬の内容は、症状に合わせて医師が判断してくれるはずです。
また、薬の量や飲み方に関しても、医師の判断を仰ぎましょう。
例として、うつ病の診断を受けた方が処方される抗うつ薬は、10日から2周間前後で効果が見えてくるとされています。(注6)
例2.認知行動療法
ためこみ症には、認知行動療法が選ばれるケースもあります。(注3)
認知行動療法とは、うつ病を含む心の病に対して、有効性が医学研究によって立証された心理療法のこと。(注7)
認知行動療法は、医師が症状に合わせ、個別に治療方法を考えていくのが一般的です。
では、治療法が確立していないためこみ症は、どこへ相談したら良いのかも一緒に見ておきましょう。
5.ためこみ症の改善は専門の医療機関への相談も視野に入れよう
ためこみ症の相談は、精神科または診療内科で可能です。ためこみ症の症状や、部屋の状況は一人ひとり違います。
現状を医師にしっかりと話し、症状にあった治療方法を一緒に探していくことが必要です。
診察は、ためこみ症の疑いがある本人が行くのがよいでしょう。
しかし、本人が精神科に行くのが難しい場合、家族が受診することも可能です。
ためこみ症は自力で治療するのが難しいため、家族のサポートが必要になります。
汚部屋、ゴミ屋敷の実家に住む家族の様子に思い当たる点が多い場合は、相談に行ってください。
以下の記事では、実家が汚い家のままでいることの危険性について紹介しています。
知らないままでいると親族間の関係にも影響が出てしまう可能性があるので、併せてこちらもご確認ください。
6.ためこみ症を放置するリスクとは?
ためこみ症の症状から考えると、部屋が到底片付けられない状態になることは容易に推測できます。
そのため、ためこみ症には以下のようなリスクが考えられます。
- ゴミ屋敷になる恐れがある
- 生活が困難になる恐れがある
- 周囲から孤立してしまう
リスクを1つずつ確認していきましょう。
リスク1.ゴミ屋敷になる恐れがある
ためこみ症が続けば、家にあるものは増え続け、最終的にはゴミ屋敷と化してしまいます。
ゴミ屋敷になると、悪臭やネズミ・昆虫などの発生により、近隣の住民に被害が及ぶ可能性も。
しかし、ためこみ症の方はものを捨てることができないため、ゴミ屋敷化が進むという悪循環が想定できるわけです。(注3)
無秩序に収集し、ためこみ続けることで生活空間はもので溢れ、一般的なゴミ屋敷と呼ばれる状態になってしまいます。
リスク2.生活が困難になる恐れがある
ためこみ症により家がゴミ屋敷になると、生活スペースをものが埋め尽くしてしまうため、生活が困難になる可能性があります。(注2)
家の中を移動するにも必ずゴミを踏まなければいけなくなり、キッチンやリビングもまともに使うことができません。
また、家の中にゴミが大量にあると、少しの火気でも大規模な火災が起きる可能性も。
生活域をゴミが埋め尽くしてしまうことは、生活を営むうえでも大きなリスクとなります。
リスク3.周囲から孤立してしまう
周囲から孤立してしまう状態になるのもリスクの1つです。
ゴミ屋敷は、悪臭や害虫などで周辺の人に悪影響を及ぼします。(注5)
また、蓄積されたものによって部屋の掃除ができずに、とても来客を呼べる状態ではありません。
その結果、友人や家族を招きにくく、孤立しやすい状況となりやすいです。
そしてためこみ症が悪化すれば、家はさらに荒れてしまい誰も家に来ることができなくなります。
ためこみ症は、自然と改善されていくものではないと言われています。
そのままにしておくのではなく、治療をしながらどこかのタイミングで部屋をきれいにリセットしていく必要があるでしょう。
6.ためこみ症以外の片付けられない障がいもある
あなたの家族や知人がゴミを片付けられないのは、ためこみ症以外の病気が原因かもしれません。
例えば、うつ病や統合失調症のような心のトラブルや障害も、ゴミを溜め込んでしまうきっかけとなる可能性があります。
症状を正しく認識することは、問題を解決するために重要なアプローチです。
今回の記事で、ためこみ症とは違うかもしれないと思った方は、『ゴミ屋敷や汚部屋は病気のせい?部屋が片付けられない病気とその対処法を解説』の記事をチェックしてください。
7.部屋をリセットしたいならブルークリーンへ相談ください
ためこみ症などで溜まってしまったゴミや不用品のお片付けに悩む方は、ぜひ私たちブルークリーンにご相談ください。
ブルークリーンでは、ゴミ屋敷から簡単なハウスクリーニングまで幅広く掃除をしてきました。
ためこみ症の場合は、自分でなんとかしようと思っても、モノが減らないことでなかなか作業が進まないことが多いです。
ブルークリーンにおまかせ頂ければ、短時間での片付け・清掃を行います。
もちろん、相談や見積もりは無料です。
一人で悩んでいらっしゃる方は、まずはお話だけでもお聞きしますので、気軽にご相談ください。
まとめ
ためこみ症は、不要なものにまで執着し、ものを捨てることに大きな苦痛を感じてしまいます。
精神科、心療内科で医師へ相談しましょう。
そして、治療によりものへの執着が軽くなった後は、部屋の片付けをして健康的な生活を送れるようにすることが大切です。
ぜひ、この記事を参考にためこみ症について考えてみてはいかがでしょうか。
出典元:
注1)人はなぜモノを溜め込むのか:ホーディング傾向尺度の作成とアニミズムとの関連性の検討
注2)ためこみ症|MSDマニュアルプロフェッショナル版
注3)ためこみ症|MDマニュアル家庭版
注4)荒廃した住居の住人に対する精神保健福祉的介入のあり方
注5)自治体による「ごみ屋敷」対策-福祉と法務からのアプローチ-|公益財団法人 日本都市センター
注6)うつ病ネット|産業医科大学名誉教授 中村純
注7)認知行動療法|e-ヘルスネット
ためこみ症についてよくある質問のまとめ
最後に、ためこみ症に関してよくある質問をまとめました。
Q1.ためこみ症とはどんな症状?
物を捨てることが苦痛・物への執着心が制御できない・家が大量の物で溢れているなどがあります。
Q2.ためこみ症になる原因とは?
遺伝・性格・環境の要因が重なって発生すると言われています。
Q3.ためこみ症の治療方法とは?
特定の治療法は確立されていません。
特定の抗うつ薬の服用と認知行動療法を行う試みは進められています。