火事が起きたあと、「見た目は元に戻ってきたのに、焦げたような臭いだけが消えない」と悩む方は少なくありません。換気をしても掃除をしても、しばらくするとまた臭いが戻ってくるという状態が続くと、日常生活にも大きなストレスになりますよね。
そこで本記事では、火事後の臭い対策に使える消臭キットの中から、火災臭への対応実績があり、家庭でも使いやすいものを3つ厳選して紹介します。
あわせて、失敗しない選び方のコツや、自分で対処する場合の消臭手順、さらに業者へ依頼すべきタイミングについてもわかりやすく解説します。
「まずは自分でできることを知りたい」「業者に頼むか迷っている」という方は、ぜひ参考にしてください。
- 火事後の臭い除去におすすめ消臭キット
- 火事用消臭キットの選び方
- 消臭キットを使って火事後の焦げ臭さを消す方法
火事後の臭い除去におすすめ消臭キット3選

火事後に残る臭いは、壁や家具の中にまで染み込んでいることが多いのが特徴です。そのため、香りでごまかすタイプの消臭剤ではなく、臭いの原因に対応できる専用の消臭剤を使う必要があります。
ここでは、火災臭への使用を想定して作られた消臭キットの中から、家庭でも扱いやすいものを3つ紹介します。それぞれの使い方も紹介するので、今の状況に合ったものはどれかをイメージしながらチェックしてみてください。
業務用消臭剤 マイクロゲルYellow|カルモアダイレクト

出典:業務用消臭剤|マイクロゲルYellow|カルモアダイレクト
「マイクロゲルYellow」は、火災現場で発生する強い臭いへの対策を目的として開発された業務用の消臭剤です。ボヤ・火事の後に残りやすい焦げ臭さなど、一般的な消臭剤では対応が難しい臭いを想定して設計されています。
使用する際は100倍に薄めて使うので、本体30mlで3,000mlと、大量の消臭剤を作れるのがメリットです。
- ボヤ・火災臭:火事やボヤの際に発生した煙や煤が建材や家具に染み込んだ、重く残りやすい臭い。
- 焼き焦げた臭い:木材や布、プラスチックなどが部分的に燃えたことで生じる、ツンとした刺激のある臭い。
- 薬品臭:化学製品や樹脂、塗料などが燃焼・反応した際に発生する、鼻に残りやすい臭い。
- 忌避剤臭:害獣・害虫対策に使われる薬剤由来の、薬品系で刺激の強い臭い。
なお、使用後は、風通しを良くした状態で自然乾燥させることが基本です。
また、安全性の高い成分が使われていますが、人体やペットに直接噴霧することは避けましょう。基本的にはシミにならない成分ですが、水分の影響を受けやすい素材(布・特殊建材など)に使用する場合は、目立たない場所で試してから使うのがおすすめです。
LLST-220 500ml入り(スプレー)|グラフトン

出典:グラフトン LLST-220 500ml入り(スプレー)| グラフトン株式会社
グラフトンの「LLST-220(500ml・スプレー)」は、火災後に残る強い臭いに対応する業務用の消臭剤です。火災によって発生する芳香族化合物・アルデヒド類・硫黄化合物など、臭いの原因物質に化学的に作用し、臭いを分解・無臭化します。
希釈不要でそのまま使えるため、消臭作業に慣れていない方でも扱いやすいのが特徴です。液体は白色で、上層に透明な層が分離する特性がありますが、使用前によく攪拌(かくはん)することで問題なく使用できます。
- 火災臭の芳香族化合物・アルデヒド化合物:火事で物が燃えたときに発生する、鼻に強く残る刺激のある化学臭
使用前は分離している透明層がなくなるまでよく攪拌してください。火災臭が残る壁・床・天井・収納部などの表層面にまんべんなく塗布し、臭いが強い箇所や出入口周辺は多めに塗布します。
塗布後は、表面に残る白粉を拭き取って完了です。施工直後は特有の臭いが2〜4時間程度残る場合がありますが、時間の経過とともにほぼ無臭化します。
なお、使用時は有機ガス用防毒マスク、手袋、ゴーグル、保護衣などの防護具の着用が推奨されています。人や動物に直接吹きかけることは避けましょう。
業務用消臭剤 ミラクリーンR|ハーパーベンソン株式会社

出典:業務用消臭剤 ミラクリーンR|ハーパーベンソン株式会社
「ミラクリーンR」は、平成6年に発売された日本製の業務用消臭剤で、長年にわたりさまざまな現場で使用されてきた実績があります。
無臭性を重視した設計で、施工後に香りが残らない点が特徴。壁や床などの表面に噴霧することで、有効成分がその場にとどまり、臭いを「一時的に消す」のではなく、乾燥後も消臭効果が持続するようになっています。
- 孤独死の現場、動物の臭い、火災現場の臭い
- タバコの臭い
- エアコンの臭い
- 車の臭い
基本的な使い方は、壁・天井・床・カーテンなど、臭いが付着している表層面に噴霧するだけでOK。あらかじめ汚れを落としたうえで、臭いの原因がある箇所や周辺の面に万遍なく噴霧し、換気しながら自然乾燥させてください。乾燥後も成分がその場に残り、消臭効果が持続します。
なお、使用後は白い結晶が残る場合があるため、目立つ場所への使用には注意が必要です。
また、ミラクリーンRの消臭成分は水溶性のため、水がかかる場所での使用には向いていません。
火事用消臭キットの選び方

火事用の消臭キットを選ぶ際は、価格や手軽さだけでなく、「火災臭への対応を想定して作られているか」「安全性が確保されているか」「使用範囲に対して容量が十分か」といった点を総合的に判断する必要があります。
ここからは、最低限押さえておきたいポイントとして、以下3つを紹介します。
- 火災臭に特化したものを選ぶ
- 安全への配慮がされているかを確認する
- 容量は十分かチェックする
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
火災臭に特化したものを選ぶ
火事後の消臭には、家庭用ではなく「業務用」として設計された消臭剤を選びましょう。
火災臭は、木材・布・プラスチック・油分・化学製品など、複数の素材が同時に燃えることで発生する非常に複雑な臭いです。そのため、日常的な生活臭を想定して作られた家庭用消臭剤では、臭いの原因に対応しきれません。
一方、業務用消臭剤は、火災現場や事故現場など、人が住めないほど強い臭いが残る状況を前提に開発されています。臭いを香りで覆うのではなく、原因物質に直接作用し、分解・無臭化する設計になっている点が大きな違いです。
「火災臭対応」「焦げ臭対応」と明記されているか、業務用としての使用実績があるかを確認し、用途が明確に「火災臭向け」の製品を選びましょう。
安全への配慮がされているかを確認する
消臭作業は室内で行うため、人体への影響に配慮された製品かどうかの確認が欠かせません。
肌に触れても問題がないか、刺激臭が強すぎないか、換気を行えば安全に使用できる設計かなど、家庭内での使用を想定した消臭剤かをチェックしましょう。
また、消臭は複数回にわけて作業を行うことも多いため、作業する人が長時間吸い込んでも負担にならないか、という視点も重要です。使用時の注意事項や、必要な防護具の有無もあわせて確認しておきましょう。
特に、小さな子どもやペットがいる家庭では、成分表示や使用上の注意を必ず確認し、乾燥後に触れても問題がないか、誤って口に入るリスクがないかといった点まで考慮して選ぶことが大切です。
容量は十分かチェックする
消臭キットは、部屋の広さと作業回数を考えて、余裕のある容量を選びましょう。
消臭作業は一度で終わるとは限らず、臭いの強さや染み込み具合によっては、時間を空けて複数回スプレーする必要が出てくることがあります。特に壁や天井、収納内部など、臭いが残りやすい場所が多い場合は、想定以上に使用量が増えるケースも少なくありません。
購入前には、「この容量でどこまで対応できるか」を確認してください。希釈タイプの場合は「何㎡まで使えるか」が目安になります。
部分的な消臭か、家全体を対象にするのかによっても必要量は変わるので、消臭剤を使用する場所も具体的にイメージしておきましょう。
消臭キットを使って火事後の焦げ臭さを消す方法

消臭キットを使う際は、方法を間違えると十分な効果が得られない場合があります。
火事後の消臭は、「換気」「煤の除去」「消臭」の順番を守ることが基本です。ここでは、自分で行う場合の基本的な流れを解説します。
まずは部屋を徹底的に換気する
火事後の消臭作業で、最初に必ず行うべきなのが換気です。
室内には、目に見えない煙成分や臭いの粒子が空気中に残っており、この状態で消臭剤を使っても十分な効果は期待できません。まずは臭いの元となる空気を外に逃がすことが重要です。
また、換気を行う際は、窓やドアを1カ所だけ開けるのではなく、できるだけ対角線上に2カ所以上開けて空気の通り道を作るのがポイントです。
可能であれば、扇風機やサーキュレーターを使い、室内の空気を外へ押し出すように風を当てると効率が上がります。
換気を省略すると、あとから臭いがぶり返す原因になりかねません。換気は消臭作業の下準備であり、土台となる工程だと考えて丁寧に行いましょう。
煤汚れを拭き掃除・はたき掃除する
換気が終わったら、次は壁や床、家具の表面についた煤(すす)を取り除きます。この工程で最も重要なのは、いきなり水拭きをしないことです。
煤は非常に細かく、水分を含むと汚れが広がり、かえって素材の奥に臭い成分を押し込んでしまうおそれがあります。
まずは、乾いた布やはたき、掃除機などを使い、煤を回収するドライ処理を徹底して行いましょう。表面の煤をできるだけ除去してから、必要に応じて拭き掃除に進むのが基本です。
ドライ処理が終わり表面の煤がほとんど見えなくなったら、必要に応じて拭き掃除に進みます。
拭き掃除の方法としては、アルカリ電解水を使う方法があります。煤や油分を含んだベタつく焦げ汚れには油分が含まれていることがあるため、アルカリ性の洗浄剤が効果的です。
煤汚れがひどいものは処分する
消臭作業を進める中では、物を残すか、処分するかを判断することも重要です。
カーテンやラグ、クッション、紙製品などは、煤や臭いが繊維や内部まで染み込みやすく、表面を掃除しても臭いが残ってしまう可能性が高いです。消臭剤を使うと一時的に臭いが弱まることはありますが、時間が経つと再び臭ってくるケースも少なくありません。これは、臭いの原因そのものが内部に残っているためです。
何度も消臭作業を繰り返しても改善しない状態は、精神的な負担になりやすく、生活の質にも影響します。そのため、無理に残そうとせず、処分したほうが結果的に早く快適さを取り戻せる場合もある、という視点を持つことが大切です。
臭いが気になるところに消臭スプレーを吹きかける
換気と煤の除去が終わったら、ようやく消臭スプレーの出番です。ここまでの下処理を行っていない状態でスプレーだけを使っても、十分な効果は期待できません。消臭剤は仕上げの工程だと考えましょう。
使用する際は、部屋全体に闇雲に吹きかけるのではなく、壁紙、天井、家具の裏側、収納内部など、臭いが残りやすい場所を中心にピンポイントで使用します。使用量や方法は必ず説明書に従い、過剰な使用は避けてください。
一度の作業で完全に臭いが消えない場合もありますが、正しい手順で数回に分けて行うことで、徐々に改善するケースは多くあります。それでも臭いが残る場合は、個人での対応に限界があるサインと考えることも大切です。
ホームセンターやドラッグストアの消臭剤でも焦げ臭さは消える?

結論から言うと、ホームセンターやドラッグストアで販売されている一般的な消臭剤では、火事後の焦げ臭さを根本的に消すことは難しいのが実情です。
ホームセンターやドラッグストアの消臭剤は、トイレ臭や生活臭、タバコ臭など、日常的に発生する臭いを一時的に和らげることを目的として作られており、臭い成分を分解するのではなく、香りで覆ったり、空気中の臭いを一時的に吸着する仕組みを採用しています。
そのため、火災によって発生した煙臭や焦げ臭のように、壁紙や建材の奥にまで入り込んだ臭いには十分に作用しません。
市販消臭剤を使った場合、最初は「少し良くなった」と感じることがあります。しかし時間が経つと再び臭いが戻るうえ、香りと焦げ臭が混ざってしまい、かえって不快になるケースも少なくありません。これは、臭いの原因そのものが残ったままだからです。
火災臭に対処するには、原因物質を分解・無臭化する設計の、火災臭に特化した消臭キットを使う必要があります。
市販消臭剤は、完全に臭いが取れたあとの仕上げや日常的な空気ケアとして使い、火事後の本格的な消臭には業務用のアイテムを選ぶことが重要です。
火災後の臭いが消えないなら専門業者への依頼も検討しよう
消臭キットを使っても臭いが改善しない場合、それは個人で対応できる範囲を超えているサインである可能性があります。
実際、火災臭は壁紙や床材の表面だけでなく、下地材や断熱材、天井裏など、目に見えない部分にまで染み込んでいることが多く、家庭用の消臭剤では対応しきれないケースも少なくありません。
そんなときは、火災後の臭い消しに特化した専門業者への依頼を検討しましょう。
専門業者では、オゾン脱臭や専用機材を使った消臭ができるため、自分で何度も消臭作業をするよりも、早く確実に臭いを消すことが可能です。
無理に自分で対処を続けるより、早めに専門業者へ相談することで、結果的に時間や費用、精神的な負担を抑えられるでしょう。
火災後の消臭でお困りならブルークリーンへご相談を!

ブルークリーンでは、火災後の状況を丁寧に確認し、被害状況に合わせた最適な消臭作業を行っています。
家庭用では対応しきれない臭いにも、専門機材と経験を活かして対応可能です。
- 調査(被害状況と臭い原因の特定)
- 表層ドライクリーニング(煤の物理除去)
- アルカリ分解洗浄(煤の化学洗浄)
- 表面乾燥工程
- 下地保護剤による仕上げ
- 内装工事(希望に応じて実施)
- 効果測定(希望に応じて実施)
「この臭い、本当に消えるの?」「業者に頼むほどなのかわからない」そんな不安がある方も、お気軽にご相談ください。経験豊富なスタッフが現地調査を行ったうえで、最適なプランをご提案させていただきます。
まとめ
火事後の臭いは、一般的な生活臭とは性質がまったく異なり、簡単に消えるものではありません。そのため、火災臭に特化した消臭キットを選び、正しい手順で作業を行うことが重要です。
それでも改善が見られない場合は、無理に自力で続けようとせず、専門業者への依頼を検討しましょう。早めに対応することで、臭いの再発を防ぎ、快適な生活を取り戻しやすくなります。
▶経歴
・YouTube「特殊清掃ch|すーさん」登録者5.3万人
・ペストコントロール技能師(日本ペストコントロール協会)
・IICRC認定テクニシャン(CCMT/OCT)
・Goldmorr認定テクニシャン(カビ除去スペシャリスト)
・JRES認定テクニシャン(火災水害復旧対策訓練修了)
・横浜市栄区自治体研修(「ごみ屋敷の解消と再発防止に向けた寄り添い支援」)
・これまで8年以上4,000件以上の現場(孤独死・火災・水害・ゴミ屋敷・遺品整理など)に携わる
▶メディア出演
・「ABEMA 変わる報道番組 #アベプラ【公式】」ABEMA
・「日刊SPA!」定期連載中
・「bizSPA!フレッシュ」
・「スタジオパーソル」単独取材
・「田村淳の地上波ではダメ!絶対!」BSスカパー
・「Channel恐怖」Amazon prime video







