いざという時に身元不明の故人が見つかると、思わぬ問題に直面するものです。
そのときに役立つのがDNA鑑定ですが、警察が行うものなのか、それとも専門の業者に依頼するべきなのか、費用や所要時間も気になるところです。
そこで、この記事では孤独死が起こった後に必要となるDNA鑑定について、警察と民間業者による費用の差、鑑定にかかる日数、そして相続放棄を検討する上での対応策を含めて解説します。
孤独死に直面した方に役立つ内容となっているため、ぜひ最後までご一読ください。
発見が遅れた孤独死の遺体はDNA鑑定による身元確認が必要
孤独死とは、一人暮らしの方が自宅などで亡くなり、その死が長期間にわたって発見されない状態のことを指します。
孤独死の場合、発見が遅れた結果、遺体が著しく腐敗してしまい、顔などの外見からの身元確認が困難な状態になることも少なくありません。
この状態の遺体は、単純な照合ではなく、DNA鑑定による身元確認が必要となります。
具体的には、遺体の状態が以下の場合にDNA鑑定を考慮します。
- 長期間にわたり遺体が発見されなかった孤独死で、腐敗が進んでいる
- 遺体がそこに住んでいた人のものかどうかの確認が求められる
DNA鑑定は、遺体のDNAと亡くなったと推測される人物の親族のDNAを比較分析することで、身元を特定する手段です。
これにより、孤独死した故人が誰であるかを正確に把握でき、残された遺族に対する故人の意思や法的な手続きの精確な実施が可能になります。
警察や業者が行うDNA鑑定の費用はどれくらいかかる?
DNA鑑定の際の費用は、警察に委託した場合は基本的に無料で、民間の業者に依頼すると10万円前後かかることが一般的です。
以下、それぞれに分けてより詳しく紹介します。
- 警察が行った場合の費用
- 民間の業者に依頼した場合の費用
ぜひ参考にしてください。
費用1.警察が行った場合の費用
警察が行うDNA鑑定の費用は、無料です。
法的な検視や必要な作業(現場検証、家宅捜索、遺体の一時的保管と管理等)を行う場合、それぞれのサービスについては通常、市民に追加費用が発生しないためです。
ただし、無料なのはDNA鑑定による特定までとなります。
例えば、遺族が行政解剖(死因を究明して対策等に資するもの)を承諾した際には、解剖費用として約8万円から12万円の支払いを求められることがあります。
また、医師によって遺体を検案(身元確認などを含む遺体の検査・認定)する際には、検案料として約2万円から3万円が必要です。
加えて、死体検案書を発行するために約5,000円から1万円の費用が発生することもあります。
さらには、遺体を警察署から火葬場や葬儀場へ移動させる際には、基本的に約1万2,000円から1万5,000円が遺体搬送料として計算されることが一般的です。
ただし、これらは目安であり、具体的な費用は各警察署や自治体によって異なる可能性があるため、該当する警察署に直接問い合わせてください。
費用2.民間の業者に依頼した場合の費用
孤独死現場で発見された遺体の身元確認のためにDNA鑑定を検討している場合、民間の業者に依頼すると、費用は概ね10万円前後が目安となります。
これはDNA鑑定に特化した検査サービスを提供する民間企業の一般的な費用であり、鑑定対象の関係性(直系親族や兄弟姉妹など)や検体タイプ(血液、唾液、髪の毛等)によって多少の価格差が存在します。
また、孤独死があった場合の身元確認で必要とされる鑑定の種類によっては、追加費用が必要になるケースもあり得るものです。
そのため、具体的な条件や必要な検査については民間の業者へ直接問い合わせを行うことが重要です。
警察や業者が行うDNA鑑定にかかる日数はどれくらい?
警察や業者によって、DNA鑑定を実施する際の所要時間は異なります。
- 警察が行うDNA鑑定にかかる日数
- 業者が行うDNA鑑定にかかる日数
それぞれのケースにおける一般的な鑑定期間を見ていくことにしましょう。
日数1.警察が行うDNA鑑定にかかる日数
警察が手がけるDNA鑑定には、約10日の期間が必要と見積もられることが多いです。
しかし、地域や警察機関によっては、より迅速に処理される場合もあります。
また、孤独死に関連するDNA鑑定のスピードは、技術や人員、現場の状況などに影響されるものです。
日数には変動が伴うことを認識しておくと良いでしょう。
日数2.業者が行うDNA鑑定にかかる日数
業者に依頼したDNA鑑定の所要時間は、約1か月から3か月程度を見積もるのが一般的です。
孤独死のケースでは、特に遺体の状態や鑑定に必要なサンプルの取得状況によって、多少の時間がかかることも考慮します。
ただし、業者によってはもっと迅速に対応することも可能なケースもあるため、複数の業者に問い合わせて、所要時間や費用の見積もりを取ることをおすすめします。
総じて、孤独死に関連した遺体のDNA鑑定は時間と費用を要するプロセスですが、正確な身元確認のためには必要不可欠となります。
早めに手続き開始を開始し、進捗状況を業者に確認しながら適切に対応することが肝心です。
注意!孤独死後に相続放棄をするなら早めにDNA鑑定をするべき
孤独死が発生した場合、遺体となった方の身元確認や相続人の特定など、様々な手続きが必要になります。
特に、相続人が相続放棄を検討している場合、相続開始を知った時から3か月以内にしなければなりません。
この期間を過ぎてしまうと相続放棄はできなくなるため、早急な行動が求められます。
民間の業者にDNA鑑定を依頼する場合、死亡連絡を受けてからすぐに鑑定を進めても、1〜3か月と相続放棄の期限に間に合うか微妙なラインになることがあります。
故人の尊厳を守りつつ、遺族が負担を最小限にするためにも、慎重かつ迅速な対応が大切です。
注意点1.財産や債務の状況をすぐに確認する
相続放棄を検討する際に、孤独死後の財産や債務の状況を速やかに確認することは極めて重要です。
具体的には、故人宅に入り、遺された資産や負債の手がかりとなる通帳、不動産権利証、保険証券、株関連書類、督促状、借用書、税金の滞納通知書等の書類を探し出すことです。
また、早い段階で専門家のアドバイスを求めることで、正確な資産状況の把握や、法的な手続きにおける誤りを避けることができます。
債務が財産よりも多い場合、相続を放棄することで、故人の借金を引き継ぐことなく、自身の財産を守ることが可能です。
しかし、相続放棄をする・しないにしても、適切な判断を行うためには、孤独死後であってもDNA鑑定を含む身元確認が必要となります。
注意点2.先に戸籍謄本を取得しておく
孤独死が発生した際、故人とされる人物との法的な関係を明らかにする必要があり、これには戸籍謄本が不可欠です。
しかし、DNA鑑定の結果を待ってから戸籍謄本を取得すると時間がかかりすぎ、結果として相続放棄の機会を逃す可能性があります。
戸籍謄本は、故人の家族構成や続柄を確認できる公的な書類であり、相続手続きをはじめる上でもっとも基本となるものです。
そのため、故人の戸籍謄本はDNA鑑定の前に調達しておくことが推奨されます。
これによって、DNA鑑定の結果が出てから速やかに相続手続きや相続放棄手続きに移ることができ、孤独死に関連する法的プロセスを効率的に進めることが可能となるものです。
注意点3.相続放棄の申述書を提出する
先述したように、相続放棄を行うためには、故人の死亡を知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出する必要があります。
また、提出する際は戸籍謄本や住民票といった身分証明書が必要になることも一般的です。
この手続きにおいて、相続放棄の意向が固まっている場合は、DNA鑑定の結果を待つことなく家庭裁判所に事情を説明し、相続放棄の申述書を先に提出できます。
具体的には、まず家庭裁判所にご自身の事情を説明し、相続放棄の申述を行う意向を告げます。
その上で、DNA鑑定の結果を待っている旨を伝え、申述書の提出にあたってどのように進めれば良いか指導を求めると良いでしょう。
しかし、相続放棄を前提に話を進めていくため、これに迷いがある場合や決定していない場合、この手続きを進めることはできません。
まとめ
孤独死が起きて、身元確認が必要な場合、DNA鑑定は警察・民間の業者によって行われます。
遺体の発見が遅れた場合、特にこの手段が採られます。
この鑑定にはそれぞれ異なる費用と時間が掛かるため、適切な選択が求められます。
相続の手続きを迅速に進めるためにも、早めのDNA鑑定の実施が推奨されます。
特に相続放棄をする場合は、放棄の申述書提出前に、財産や債務の状況を確認し、戸籍謄本を取得しておくことが大切です。
このように遺体の身元特定と相続手続きでは少なからず時間との戦いが伴うため、効率的に対応しましょう。