火災後の現場に残る有害物質とは|健康への影響や除去方法を解説

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「火災後の現場に入っても大丈夫?有害物質があるって聞いたけど…」

「火事のあと、室内に残った焦げ臭さや煙のにおいがなかなか取れず、このまま住み続けて大丈夫なのだろうか…」

半焼やボヤなどの比較的小規模な火災であっても、このような不安を抱く方は多いのではないでしょうか。

実は、火災後の現場には 煙・煤(すす)・焦げた建材から発生する有害物質が長期間残留するケースがあり、放置すると健康リスクが生じる可能性があります。

本記事では、火災後に残る有害物質やそれらが健康に及ぼす影響、安全に除去するための対策・専門業者の必要性まで詳しく解説します。

火災後も安心して生活を再建するために、まずは「どんな有害物質が残り得るのか」「どこまで対策すべきなのか」を正しく理解しておきましょう。

この記事でわかること
  • 火災後の現場に残る有害物質とそれによる健康被害
  • 有害物質の除去に専門業者への依頼が必要な理由
  • 火災後の有害物質除去におすすめのサービス

火災後の現場に残る有害物質とは?

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火災が発生すると、建材・家財・電気配線・樹脂製品など、多くのものが高温で燃焼・加熱され、化学物質・微粒子・有毒ガスといった有害物質が大量に発生します。

そして、これらの物質は火が消えたあとも室内の壁・天井・床に付着し、時間が経っても残留し続けるケースがあります。

ここでは、火災直後に発生するものと、火災後もしばらく残留する有害物質をそれぞれ見ていきましょう。

火災直後に発生する有害物質

火事の最中は、酸素不足の状態でさまざまな物質が不完全燃焼を起こすため、多くの有害物質が一気に発生します。

代表的な有害物質としては、以下のようなものが挙げられます。

有害物質 概要・発生源
一酸化炭素(CO) 木材・紙・家電などの不完全燃焼で発生。無色無臭のため気づきにくい。
シアン化水素(HCN) ウレタン、樹脂製品、繊維類が燃えた際に発生。煙の中に含まれる強毒性ガス。
揮発性有機化合物(VOC) 接着剤・塗料・家具・建材が高温で分解されて揮発。火災後の気化でも発生。
多環式芳香族炭化水素(PAH) 家具や建材、プラスチックの不完全燃焼で発生する微粒子。すすに多く含まれる。

これらの有害物質は、火災中だけでなく火が消えた直後にも高濃度で空気中に残っています。

特に一酸化炭素やシアン化水素は無色でにおいを感じにくく、意識しないうちに吸い込んでしまうおそれがあるため注意しましょう。

また、VOCやPAHは壁・天井・床に付着し、時間が経ってから室内で再放散するケースも多いので、不用意に火災後現場へ戻る行為は避けるべきです。

火災後しばらく経っても残る有害物質

火災が収まったあとも、建材が焦げたり高温で分解されたりすることで生成された有害物質は、室内に長期間残留することがあります。

ここでは、火災後に特に問題となりやすい代表的な有害物質を紹介します。

有害物質名 概要・発生源
アスベスト(石綿) 断熱材・天井材・外壁材などに含まれる建材。現在では建材での使用が禁止されているが、2006年以前に建てられた建物には建材として使われている可能性がある。
ダイオキシン類 PVC(塩ビ)製品やプラスチックが不完全燃焼した際に発生する有害物質。

アスベストは、特に築年数の古い住宅で注意が必要です。

火災によって建材が破損すると、普段は封じ込められている石綿繊維が剥がれ落ち、目に見えないまま空気中を漂い続けることがあります。

また、アスベストは一度吸入すると体内に蓄積しやすいため、自己判断で掃除することは非常に危険です。

一方、ダイオキシンは高温の燃焼過程で生成され、煤に混ざって壁や天井に付着します。特に、焦げた家具や建材の周辺・換気が悪い部屋・天井裏などは蓄積しやすい傾向があるので注意しましょう。

このように、火災後は見た目以上に有害物質が残っている可能性が高いため、住み続ける前に必ず専門業者による調査・除去を行うことが重要です。

火災後の有害物質による健康被害リスク

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火事後に発生する有害物質を吸い込んでしまうと、人間の体に深刻な健康被害を及ぼす可能性があります。ここからは、主な有害物質ごとにどのような症状を引き起こすリスクがあるのかを見ていきましょう。

一酸化炭素(CO)

一酸化炭素(CO)は、火災時に最も多くの健康被害を引き起こす有害物質のひとつです。

実際、消防庁の「令和6年版 消防白書」では、4うち、36.5%が一酸化炭素中毒・窒息によるものだとわかっています。

消防庁統計による建物火災の死因別死者数を示した円グラフ。一酸化炭素中毒が最も多く、次いで火傷、不明、その他、自殺などが続く。

出典:総務省消防庁「令和6年版 消防白書 第1-1-8図 建物火災の死因別死者発生状況」

一酸化炭素は、無色・無臭のため気づかないまま吸入してしまいやすいのが特徴です。体内に入ると血液中のヘモグロビンと強く結合し、全身に酸素が行き渡らなくなる「低酸素状態」を招きます。

一酸化炭素を吸い込むことで起こり得る症状は次のとおりです。

  • 軽度の中毒症状:頭痛、めまい、吐き気、倦怠感
  • 中等度の中毒症状:判断力の低下、混乱、歩行困難、強い眠気
  • 重度の中毒症状:意識障害、けいれん、昏睡、最悪の場合は致命的な状態に至る

なお、火災現場には火が消えたあとも低濃度の一酸化炭素が残るケースがあり、自覚症状が遅れて現れることもあります。

特に火災後の住宅では、換気が不十分なまま立ち入ると「なんとなく頭が痛い」「息苦しい」といった軽度の症状が出ることもあるので注意しましょう。

シアン化水素(HCN)

シアン化水素(HCN)は、火災時に発生する有害物質の中でも毒性が強く、短時間で深刻な健康被害を引き起こすことがあります。

シアン化水素によって生じる主な健康被害は以下のとおりです。

  • 軽度の症状:頭痛、息苦しさ、吐き気、めまい
  • 中等度の症状:呼吸の乱れ、動悸、脱力感、集中力の低下
  • 重度の症状:けいれん、意識消失、呼吸停止など致命的な状態

なお、これらの症状は進行が非常に早いため、本人が異変を自覚する前に症状が悪化するケースもあります。

特に火災後の密閉された室内では、低濃度でも体調不良を引き起こす可能性があるため、「少しにおいが残っている」程度でも油断は禁物です。

参考:シアン化水素|職場のあんぜんサイト

揮発性有機化合物(VOC)

揮発性有機化合物(VOC)は、建材・家具・塗料・接着剤などが高温にさらされた際に大量に気化し、火災後もしばらく室内に残留し続ける物質です。

揮発性有機化合物を吸い込むと、以下のような健康被害を及ぼす可能性があります。

  • 軽度の症状:目や鼻の刺激感、のどの乾燥、頭痛、だるさ
  • 中等度の症状:吐き気、めまい、集中力の低下、呼吸器の違和感
  • 重度の症状:長期暴露によるシックハウス症候群、ぜん息やアレルギー症状の悪化
  • 特定物質の場合:一部のVOC(ベンゼンなど)は国際的に発がん性が指摘されており、長期的な吸入は健康上の大きなリスクとなる

火災後は、揮発成分が通常より高濃度で存在しやすく、家の様子を見に行った住人が体調不良を感じるケースも少なくありません。

多環式芳香族炭化水素(PAH)

多環式芳香族炭化水素(PAH)は、火災で生じる煤に多く含まれる有害物質です。

多環式芳香族炭化水素によって起こり得る健康被害としては、以下が挙げられます。

  • 呼吸器への影響:のどの痛み、咳、気管支の炎症、息苦しさ
  • 皮膚症状:かゆみ、炎症、赤みなどの刺激症状
  • 発がんリスク:一部のPAH(ベンゾ[a]ピレンなど))は発がん性が指摘されている

PAHは、室内の壁・天井・床・換気ダクトなどに付着しやすく、一度残留すると掃除しても完全に除去できないケースがあります。粒子が非常に細かいため吸入しやすく、呼吸器だけでなく皮膚からも取り込まれる可能性がある点にも注意が必要です。

参考:多環芳香族炭化水素(PAHs)の分析|化学物質評価研究機構

アスベスト

アスベストは、一度体内に取り込まれると排出されにくく、長期的な健康被害につながる可能性があります。

アスベストを吸入した際に起こり得る健康リスクは以下のとおりです。

  • 呼吸器への慢性的影響:長期間吸入すると肺線維症(じん肺の一種)を起こし、呼吸がしにくくなる
  • 中皮腫のリスク:国際的にアスベスト暴露による発がん性が強く指摘されており、中皮腫(胸膜・腹膜のがん)との因果関係が明確になっている
  • 肺がんリスクの上昇:少量の暴露でも長期的に肺がんのリスクが高まるといわれている
  • 遅発性の症状:アスベスト関連疾患は数十年後に発症することが多く、火災後の早期対策が非常に重要

火災後は、建材が崩れていなくても高熱で劣化し、微細なアスベスト繊維が剥がれ落ちている可能性があります。

一般家庭での清掃では繊維を再飛散させるだけになってしまうため、専門業者によるアスベスト調査や除去処理が欠かせません。

ダイオキシン

ダイオキシン類は、微量であっても健康被害を及ぼすおそれがあり、火災後も長期間にわたって壁や床、天井、換気口の内部に留まり続ける可能性がある点に注意が必要です。

ダイオキシンに曝露した際に起こり得る健康被害は以下のとおりです。

  • 皮膚症状:クロルアクネというニキビのような皮膚障害が生じることがある
  • 免疫機能への影響:抵抗力の低下、感染症への感受性が上がる可能性
  • ホルモンバランスの乱れ:生殖機能・成長ホルモンなどに影響を及ぼす可能性がある
  • 発がんリスク:国際がん研究機関(IARC)では一部ダイオキシン類を「発がん性がある(グループ1)」と分類

ダイオキシンは一度付着すると自然には分解されにくく、家庭用洗剤や簡易清掃では除去が難しい物質です。

そのため、火災後に自宅や事務所へ戻る前には、専門業者による環境測定・煤の除去・脱臭処理が不可欠です。

火災後の有害物質除去には専門業者への依頼が不可欠な理由

火災後の住宅に残る有害物質の除去には専門業者が必要であることを示したバナー画像

火災後の住宅は、一見すると焦げ跡や臭いさえ消えれば元通りに見えるかもしれません。

しかし実際には、壁や天井、建材の内部、エアコンや換気ダクトなど、目に見えない場所に有害成分が入り込み、長期間残留している可能性があるため、専門業者への清掃・除去依頼が不可欠です。

ここでは、なぜ専門業者への依頼が必要なのか、その理由を具体的に解説します。

健康被害を避けて有害物質を除去できるから

火災後の清掃作業では、煙や煤に含まれる一酸化炭素やシアン化水素、アスベストやダイオキシンなどの有害物質に直接触れることになります。

これらは吸い込んだり皮膚に付着したりするだけで健康リスクがあり、一般の方がマスクや手袋だけで安全に作業することは困難です。

一方、専門業者であれば、以下のような装備と技術を用いて安全に作業を進めることができます。

  • 防毒マスク・防護服による完全防護
  • 有害物質の濃度測定や空気環境の管理
  • 作業エリアの封鎖による二次汚染の防止

作業前にアスベスト含有量調査が必要なため

火災現場の清掃・解体を専門業者へ依頼すべき理由として、作業前にアスベスト含有量調査が必要になるも挙げられます。

環境省では、アスベストを含む建物の解体・改修を行う場合、必ずアスベスト含有量調査を行い、その結果を報告することを義務付けています。

令和4年4月1日から、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づき当該工事における石綿含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等に報告することが義務づけられます。報告は、厚生労働省が所管する石綿障害予防規則に基づき、労働基準監督署にも行う必要があります。
引用元:4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします ~3月18日から電子システムによる報告ができます~

火災によって建材が劣化・破損した場合、普段は露出していないアスベストが飛散するリスクがあります。

特に2006年以前に建てられた住宅にはアスベスト含有建材が使われている可能性が高いため、火災で損傷を受けた場合は、解体・改修作業に先立って「アスベスト含有調査」を行うことが法律で義務付けられているのです。

なお、アスベスト含有量調査には、「建築物石綿含有建材調査者」という資格と専門的な機械が必要になるため、一般家庭で行うことはできません

個人の清掃では有害物質を完全に除去するのは困難だから

火災後の現場に残る有害物質は、壁・天井・床材の内部、エアコンや換気ダクト、家具のすき間などに深く入り込んでいます。

そのため、一般家庭にある清掃道具や市販の洗剤では、完全に除去するのは困難です。

また、火災後の煤は静電気で表面に強く付着し、乾拭きや掃除機を使うとかえって粉じんを舞い上げ、再汚染を広げてしまう危険もあります。

その点、専門業者は以下のような技術と機材を用いることで、有害物質を徹底的に除去することが可能です。

  • HEPAフィルタ搭載の業務用集じん機による微粒子の吸着
  • 専用の煤除去剤・脱臭剤を用いた分解洗浄
  • オゾン・熱処理・洗浄併用による臭気成分の徹底除去
  • エアコン・換気ダクト内部の分解洗浄

火災後の住宅を本当に安心して住める状態へ戻すには、表面的な掃除ではなく、専門的な除染と臭気対策が不可欠なのです。

火災後の有害物質が不安ならブルークリーンへご相談を

ブルークリーンの紹介

火災後の「有害物質の残留が不安」「臭いが取れない」「いつ安全に戻れるのか分からない」とお困りなら、ブルークリーンへの依頼がおすすめです。

ブルークリーンでは、アスベスト・ダイオキシン類の調査はもちろん、HEPAフィルターによる煤の回収、アルカリ洗浄での化学分解、強制乾燥、下地処理までを一貫して対応しています。

必要に応じて提携業者とも連携しながら除染・清掃を行うため、生活再建までのサポートを丸っとお任せいただけます。

また、「臭いだけを薬剤で隠す簡易処理」ではなく、原因物質そのものを除去する“根本対策”にこだわっているため、再臭気や健康リスクの残留を最小限に抑えられるのも当社の特徴です。

「どこに依頼したらいいか分からない」「そもそも依頼すべきなの?」という方も、まずは一度お気軽にご相談ください。

現地状況の確認から、最適な復旧プランまでを経験豊富なスタッフが丁寧にご案内いたします。

火災後の有害物質に関するよくある質問

ここでは、火災後の有害物質に関するよくある質問を取り上げ、それぞれに回答していきます。似たような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

火災現場には発がん性物質はありますか?

火災現場には、発がん性が指摘されている物質が多く残留する可能性があります。

特に注意すべきは、家具や建材・家電などが燃えることで発生する以下の物質です。

  • 揮発性有機化合物(VOC)
  • 多環式芳香族炭化水素(PAH)

これらは目に見えないものの強い毒性があり、長期間残留するケースもあるため注意が必要です。

近所の火事で一酸化炭素中毒になる可能性はありますか?

近所の火事であっても、一酸化炭素中毒になる可能性はゼロではありません。

火元が自宅でなくても、

  • 窓が開いていた
  • 換気扇が回っていた
  • 隙間から煙が大量に入り込んだ

といった状況では、室内に一酸化炭素が滞留する場合があります。

「近くの火事だから安心」と思わず、煙の匂いが残る・頭が痛い・喉が痛い といった症状がある場合は、すぐに換気と退避を行い、安全を確認することが大切です。

【関連記事】
近所で火事!家が臭いときの対処法や原因、焦げ臭さを放置するリスクを解説

火災後の有害物質除去を依頼する業者の選び方は?

火災後の除染は専門性が高く、一般的な清掃業者では対応できないケースもあります。

業者選びでは、特に次のポイントを確認しましょう。

  • 火災現場の清掃・煤除去・消臭に特化した実績があるか
  • 有害物質のリスク診断や測定ができるか
  • 廃棄物を自治体のルートで適切に処理できるか
  • 保険会社・リフォーム会社と連携した復旧が可能か

これらを満たす業者であれば、火災後の不安を解消でき、安心して生活再建を進めることができるでしょう。

まとめ

火災後の現場には、一酸化炭素やシアン化水素、アスベストやダイオキシンなど、目に見えない有害物質が多く残る可能性があります。

これらは頭痛・めまい・喉の痛み・皮膚トラブルといった急性症状だけでなく、長期的な健康リスクにつながるケースもあるため、「半焼だから大丈夫」「見た目がきれいだから問題ない」といった油断は禁物です。

また、有害物質は壁・天井・床材に深く染み込んでいるため、一般的な掃除では完全に除去することができません。むしろ、再拡散・再飛散のリスクがあるので、専門業者への依頼を検討しましょう。

なお、ブルークリーンでは専門的なノウハウや技術を用いて、火災後の有害物質を適切に除染・清掃することができます。作業の流れや費用についても丁寧にご説明させていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。

監修者 鈴木亮太(すーさん)

ブルークリーン株式会社

取締役 環境復旧対策部部長

▶経歴
・YouTube「特殊清掃ch|すーさん」登録者5.3万人
・ペストコントロール技能師(日本ペストコントロール協会)
・IICRC認定テクニシャン(CCMT/OCT)
・Goldmorr認定テクニシャン(カビ除去スペシャリスト)
・JRES認定テクニシャン(火災水害復旧対策訓練修了)
・横浜市栄区自治体研修(「ごみ屋敷の解消と再発防止に向けた寄り添い支援」
・これまで8年以上4,000件以上の現場(孤独死・火災・水害・ゴミ屋敷・遺品整理など)に携わる

▶メディア出演
・「ABEMA 変わる報道番組 #アベプラ【公式】」ABEMA
・「日刊SPA!」定期連載中
・「bizSPA!フレッシュ
・「スタジオパーソル」単独取材
・「田村淳の地上波ではダメ!絶対!」BSスカパー
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