1.特殊清掃のご依頼背景は?
今回ご相談いただいたのは、東京都内で賃貸物件を管理している不動産会社様でした。
管理物件の一室で孤独死が発生し、体液や腐敗臭への対応を含めた特殊清掃業者を探していたとのことです。
当初は遺品整理を請け負う別の業者に問い合わせたものの、「特殊清掃の専門対応ができない」と断られてしまい、弊社ブルークリーンへお問合せをいただきました。
今回は「立ち会いなしで現地確認をしてほしい」とのご要望だったため、あらかじめ鍵をお預かりし、こちらで調査を実施することになりました。
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2.現場の状態は?部屋の状況について
調査当日、対象の建物は築30年以上が経過した8階建てのマンションで、該当の部屋は単身者向けの1Kタイプでした。
玄関扉を開けた瞬間、内部から強い腐敗臭が漂ってきたため、すぐに扉を閉めて外からの確認を進めました。
室内ではキッチン前の床に体液が黒く広がっており、その周辺には大量のウジ虫が発生していました。
部屋全体の残置物は多くなかったものの、フローリングの下まで汚染が及んでいると判断し、床材の一部を解体・撤去する必要があると見積もりました。
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3.特殊清掃の内容について
今回の施工事例では、現地調査の結果をもとに以下の作業を不動産会社様へご提案いたしました。
- 腐敗物の撤去
- 除菌処理
- 脱臭作業
- 汚染箇所のフローリング解体
- クロス剥がし
- 形見分け(貴重品・証券類の捜索)
- 残置物の撤去
- パッキング(搬出前の梱包)
後日、正式にご依頼をいただき、最短スケジュールで作業の段取りを組みました。
作業当日は、事前の見積時よりも明らかに腐敗臭が強くなっており、特に脱臭工程を重点的に実施する必要があると判断しました。
まずは全体の除菌をおこない、作業スタッフが安全に立ち入れる環境を確保。
その後、腐敗物の撤去と、体液が付着していたフローリングや扉周辺のスライド部分に対して、専用薬剤を用いた丁寧な消毒処理を実施しました。
安全が確保された段階で、残置物の撤去と仕分けをスタート。
形見分けの対象となる貴重品は、あらかじめ不動産会社様と共有したチェックリストをもとに捜索し、半日ほどで撤去作業が完了しました。
室内が空になったあとは脱臭機器を稼働させ、さらにクロスを剥がした後にも追加の脱臭を重ねることで、壁面に染み付いた臭気も確実に軽減。
最後に、体液が深く染み込んでいたフローリングと下地の一部を解体・撤去し、全体の簡易清掃を行って作業は無事に完了しました。
4.まとめ|再発防止のために重要なこと
ブルークリーンでは、IICRC(国際インスペクション清掃認証機構)やABRA(米国バイオリカバリー協会)といった国際的な清掃技術規格を土台としつつ、それらを日本の建物事情や気候、死後変化の実態に即して再定義・体系化しています。
なぜこのような基準が必要なのか。
それは、孤独死や汚染現場における臭気や体液の浸透範囲は、目視できるレベルを超えており、従来の遺品整理業者やリフォーム業者では太刀打ちできない構造的な問題が存在しているからです。
本事例のように、マンションの高層階でも腐敗臭が階外へ漏れ、フローリング下や建具のレール奥まで体液が浸透していたようなケースでは、清掃というより“微生物と分子レベルの制御”に近い領域の技術が求められます。
私たちがこのような施工事例を公開するのは、「業界の健全化」への意志の表れでもあります。
一時的な消臭や簡易な拭き取りだけでは、再発・再汚染・ご遺族や管理会社の二次被害に繋がるため、“なぜこの技術が必要なのか”を社会に正しく伝える使命があると考えています。
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